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人材紹介と求人媒体の比較|採用企業向け損益分岐の計算法
人材紹介と求人媒体、どちらが安いのか。単純比較はできません。人材紹介は理論年収に手数料率をかける成果報酬型、求人媒体は掲載料やクリック課金という広告型で、費用が発生する条件そのものが違うからです。転職Docは、両者を「1名採用あたりの総費用」という同じものさしに置き換え、損益分岐点を計算する方法を示します。厚生労働省の公開データと、公式サイトで料金体系を開示している求人媒体の実額だけを使い、推測の単価表は作りません。
人材紹介と求人媒体は、何で比較すればいいのか
1名採用あたりの総費用で比較します。掲載料の額や手数料の料率だけを並べても、必要な採用人数によって有利さが逆転するため、比較の物差しになりません。
人材紹介は「理論年収×手数料実績率」で1名あたりの費用が決まる成果報酬型で、採用できなければ費用は発生しません。求人媒体は掲載料やクリック課金という広告費型で、投下した予算を実際の採用人数で割った額が1名あたりの費用になり、採用人数が増えるほど下がります。この記事では、両者を同じ単位に置き換え、求人媒体の予算がどこまでなら人材紹介より安くなるかを、仮定を明示した計算例で示します。
人材紹介の費用はどう決まるのか
理論年収に、職種ごとの手数料実績率をかけた額です。手数料実績率は厚生労働省「人材サービス総合サイト」で公開されています。
手数料実績率とは何か
手数料実績率は、有料職業紹介事業者が前年度に実際に徴収した紹介手数料の実績を、理論年収に対する割合で示した数値です。2025年4月から、常用就職件数が多い上位5職種について公表が義務化されました。転職Docが47都道府県・12職種で564回検索して集計した結果、手数料実績率を1職種以上公開している事業主は738社で、検索に出た事業主1,011社の73%にあたります(厚生労働省「人材サービス総合サイト」2026年9月19日取得、転職Doc編集部集計)。公開している事業主×職種の組み合わせ1,042件の中央値は27.0%、上位10%(P90)は36.7%、下位10%(P10)は15.0%でした。全体像は「人材紹介の手数料相場」にまとめています。
職種によって手数料率はどれくらい違うのか
職種によって水準が異なります。看護師・准看護師を扱う144事業主の手数料実績率の中央値は22.1%、建築・土木・測量技術者を扱う106事業主の中央値は32.8%でした(同集計)。医療・介護系は20〜25%に、技術・営業系は30〜35%に集まる傾向があります。理論年収500万円の看護師なら、中央値22.1%で手数料は110.5万円です。計算式の詳細は「成功報酬の計算方法」で解説しています。
求人媒体の費用はどう決まるのか
掲載料の有無とクリック課金の単価で決まります。公式サイトで料金体系を公開している3媒体(Indeed・求人ボックス・engage)を確認しました。非公開の媒体は「非公開」と書きます。
Indeedのクリック課金はどう機能するか
Indeedは投稿から採用まで無料で利用でき、スポンサー求人を設定した場合のみクリック課金が発生します。クリックされた時点で費用が加算され、月内の請求額が10万円に達すると即時請求、10万円未満なら月末締め・翌月払いです(Indeed公式サイト「料金・有料オプションでの掲載について」2026年9月20日確認)。クリック単価は公式サイトに数値の公開がなく、「採用予算お見積りツール」での算出が案内されています。上限予算は自分で設定でき、想定外の費用膨張を防ぐ仕組みがあります。
求人ボックスのクリック単価はいくらか
求人ボックスも無料掲載から始められ、有料オプションはクリック課金型です。広告費は「クリック数×クリック単価」で決まり、クリック単価は25円から1,000円の範囲で入札設定できます(求人ボックス法人向けヘルプ「【採用ボード】有料オプションの料金体系」2026年9月20日確認)。実際の課金単価は、入札単価を上限に掲載順位などで都度決まります。予算上限に近づくと配信が停止し、無料掲載に切り替わります。
engageの無料プランと有料プランは何が違うのか
engageは無制限の求人掲載と応募者管理を0円で利用できます。初期費用・月額費用・採用成功時の課金はありません(engage公式サイト「費用」2026年9月20日確認)。有料の「エンゲージプレミアム」はチケット制で、掲載先サイトを増やして露出を強化するプランです。チケットの単価は公式サイトに記載がなく、申し込み時の案内としています。
料金を公開していない媒体はどう扱うか
掲載型の求人メディアには、掲載料を公式サイトで公開していない媒体があります。個別見積もりが前提の媒体は、料率を推測で書かず「非公開」とし、営業担当者から見積もりを取得して比較します。
損益分岐点はどう計算するのか
求人媒体で1名採用にかかった費用が、人材紹介の1名あたり総費用(理論年収×手数料実績率)と等しくなる点が損益分岐点です。
計算式はどうなるか
求人媒体の1名あたり総費用は「クリック単価×1名採用に必要なクリック数」です。必要なクリック数は「1÷(応募率×採用率)」で逆算します。応募率はクリックのうち応募に至る割合、採用率は応募のうち採用に至る割合です。
- 求人媒体で1名採用に使える上限予算=理論年収×手数料実績率
- 逆転するクリック数=上限予算÷クリック単価
以下の2ケースは年収・クリック単価・応募率・採用率をすべて仮定した試算で、相場ではありません。
看護師採用のケースで計算するとどうなるか(仮定)
理論年収400万円、手数料実績率22.1%(看護師を扱う紹介事業主144社の中央値。厚生労働省「人材サービス総合サイト」2026年9月19日取得、転職Doc編集部集計)と仮定すると、人材紹介の1名あたり総費用は88.4万円です。求人媒体で1名採用に使える上限予算も88.4万円になります。クリック単価500円(求人ボックスの設定可能範囲25〜1,000円の中間値と仮定)、応募率2%、採用率10%と仮定すると、1名採用に必要なクリック数は500回、費用は25万円です。逆転するのは1名採用に1,768クリック(88.4万円)を超えたときで、応募率が0.5%まで下がると必要クリック数は2,000回になり、人材紹介の方が安くなります。
建築・土木の技術者採用のケースで計算するとどうなるか(仮定)
理論年収600万円、手数料実績率32.8%(建築・土木・測量技術者を扱う紹介事業主106社の中央値。同じ集計)と仮定すると、人材紹介の1名あたり総費用は196.8万円です。同じクリック単価500円・応募率2%・採用率10%の仮定なら求人媒体の費用は25万円で、逆転するクリック数は3,936回まで広がります。ただし応募率が0.2%まで下がると必要クリック数は5,000回(250万円)になり、人材紹介の方が安くなります。仮定の置き方で結論が変わるため、自社の過去の応募率と採用率を先に確認してから計算します。
費用以外の軸で比較すると何が違うのか
採用までの期間、社内の対応工数、早期離職時の返金の有無が異なります。
採用までの期間と工数はどちらが軽いのか
人材紹介は、紹介会社が母集団形成と書類選考の一次対応を担うため、採用担当者の工数は面接以降に絞られます。専門職や急募の職種では、紹介会社の候補者データベースから短期間で紹介を受けられる場合があります。求人媒体は、応募対応から書類選考・面接調整までを自社で行い、応募がいつ来るかは掲載期間中不確定です。工数は募集開始から一貫して発生します。
早期離職時の返金はどちらにあるのか
人材紹介には返戻金制度があります。有料職業紹介事業者は、職業安定法第32条の16に基づき、返戻金制度の有無と内容を人材サービス総合サイトで開示する義務を負います(e-Gov法令検索2026年9月20日確認)。開示例では、JAC Recruitmentが入社3か月以内の自己都合退職に一律50%返金、アポプラスキャリア株式会社が1か月以内80%・1〜3か月以内50%、sincereed株式会社が1か月以内100%・1〜3か月以内70%でした(各社公式サイト・開示PDF、2026年9月19日確認)。制度の詳細は「返戻金制度」にまとめています。求人媒体は広告契約のため、早期退職に応じた返金の仕組みは確認できませんでした。早期退職が起きても、求人媒体側の費用は戻らない前提で考えます。
人材紹介と求人媒体は、それぞれどんな採用に向くのか
採用したい職種や社内の体制によって向き不向きが変わります。
人材紹介が向くのは、次のような採用です。
- 専門職・管理職など、応募母数が少なく候補者データベースへのアクセスが必要な採用
- 急募で、社内に書類選考・スクリーニングの人手を割けない採用
- 手数料実績率が低い職種(看護師・介護系など中央値20〜25%)で、成果報酬の負担が比較的軽い採用
求人媒体が向くのは、次のような採用です。
- 施設介護・製造・物流など、応募母数を確保しやすく複数名を採用したい採用
- 社内に書類選考・面接調整を行う体制があり、対応工数を割ける採用
- 採用人数が増えるほど1名あたり費用が下がる仕組みを活かせる、複数名同時募集の採用
同じ職種でも、急募の1名採用と定常的な複数名募集では向く手段が変わります。紹介会社の選び方は「紹介会社の選び方7つの基準」、入社後の定着状況の確認方法は「定着率(6か月以内離職率)の調べ方」で解説しています。
よくある質問
Q. 人材紹介と求人媒体、採用単価はどちらが安いですか A. 採用できる人数によって変わります。人材紹介の1名あたり費用は理論年収×手数料実績率で決まり、求人媒体の1名あたり費用はクリック単価×1名採用に必要なクリック数で決まります。求人媒体で1名採用にかかった費用が理論年収×手数料実績率を下回れば、求人媒体の方が安く済みます。
Q. 求人媒体に、人材紹介の返戻金のような返金制度はありますか A. Indeed・求人ボックス・engageの公式サイトを確認した限り、掲載料やクリック課金に対する返金制度の記載はありませんでした(2026年9月20日確認)。人材紹介は職業安定法第32条の16に基づき、返戻金制度の有無を開示する義務を負います。
Q. 求人媒体のクリック単価はいくらですか A. 求人ボックスは公式サイトで25円から1,000円の範囲と公開しています(2026年9月20日確認)。Indeedはクリック単価そのものを公式サイトで公開しておらず、採用予算お見積りツールでの算出を案内しています。
Q. 人材紹介と求人媒体を同時に使うことはできますか A. できます。職業安定法は両者の併用を禁止していません。急募や専門職は人材紹介、応募数を確保しやすい職種は求人媒体、という使い分けが選択肢になります。
Q. 損益分岐点の計算に、理論年収以外の情報は必要ですか A. 人材紹介側は理論年収と手数料実績率だけで計算できます。求人媒体側は投下予算と実際の採用人数が必要です。採用人数は募集を出す前には確定しないため、本文の計算例は応募数・採用率を仮定した試算です。
まとめ
人材紹介と求人媒体の採用単価は、「理論年収×手数料実績率」と「クリック単価×1名採用に必要なクリック数」という別の式で決まります。比較の物差しは1名あたり総費用に統一し、求人媒体で1名採用に使える上限予算=理論年収×手数料実績率で見積もります。対応工数と早期離職時の返金の有無という違いもあり、職種と社内体制に応じて選ぶ必要があります。