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フリーランスエージェントと転職エージェントの違い|IT向け
ITエンジニアが転職を考えるとき、正社員の求人と業務委託の案件を同時に検討する人がいます。その場合、転職エージェントとフリーランスエージェントのどちらに登録すればいいのか迷います。結論は、両者は根拠となる法律もお金の流れも別の仕組みだという点です。この記事では、法律上の違い、お金の流れの違い、2024年11月施行のフリーランス新法との関係、契約前に確認することを転職Doc編集部が出典つきで整理します。
フリーランスエージェントと転職エージェントは法律上どう違うのか
別の仕組みです。転職エージェントは職業安定法にもとづく有料職業紹介事業者で、求人企業と求職者の間で雇用関係の成立をあっせんします。フリーランスエージェントは業務委託(準委任・請負)の案件を仲介する事業者で、多くは職業紹介そのものに当たりません。
職業安定法第4条第1項は職業紹介を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」と定義し、有料で行うには同法第30条の許可が必要です。フリーランスエージェントが仲介する契約は企業とフリーランスの業務委託契約(請負は民法第632条、準委任は同法第643条・第656条)で、雇用関係を成立させません。このため単体の事業では職業紹介事業の許可を必要としない場合があります。
例外として注意が必要なのがSES(客先常駐)です。契約上は準委任や請負でも、発注先が日常的に直接の指示を出すなど実態が労働者派遣法(第2条で労働者派遣を定義)上の派遣に近い場合、派遣に当たると判断されることがあります。区別の考え方を示すのが昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」です。契約書の名称だけでなく、指揮命令が誰から出ているかを確認する必要があります。
お金の流れはどう違うのか
流れる方向が違います。転職エージェントは採用企業から成功報酬を受け取り、求職者への請求はありません。フリーランスエージェントは、企業がフリーランスに支払う契約金額から仲介料(マージン)を差し引く形で収入を得ます。
転職エージェントの成功報酬の仕組みと、職種別の料率の実測値は「転職エージェントはなぜ無料か」にまとめています。ITエンジニアの転職エージェントでは、情報処理・通信技術者を扱う紹介事業主128社が公開する手数料実績率の中央値が32.7%です(厚生労働省「人材サービス総合サイト」2026年9月19日取得、転職Doc編集部集計)。
フリーランスエージェントのマージン率を公式サイトで開示するかどうかは、事業者によって異なります。公開例としてPE-BANKは、フリーランスエンジニアへの分配率を契約金額に応じて公式サイトに明記しています(2026年9月20日確認)。
| 報酬受取回数 | エンジニア分配率 | PE-BANK分配率 | |---|---|---| | 1〜12回 | 85% | 15% | | 13〜24回 | 86% | 14% | | 25〜36回 | 87% | 13% | | 37〜48回 | 88% | 12% | | 49〜60回 | 89% | 11% | | 61回以降 | 90% | 10% |
この分配率は1社の公式開示例で、他社が同じ水準とは限りません。契約前に、マージン率か契約金額と自分の受け取り額の差のどちらかを確認する必要があります。
2024年11月施行のフリーランス新法で何が変わったのか
業務委託を受ける個人を対象にした取引条件の明示義務が新たに定められました。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号、通称フリーランス新法)は2024年11月1日に施行されました。同法第2条は、従業員を使用しない個人事業者や、一人で代表を務める法人などを「特定受託事業者」と定義しています。
同法第3条は、業務委託事業者が特定受託事業者に業務委託をしたとき、給付の内容・報酬の額・支払期日などの取引条件を書面または電磁的方法で直ちに明示する義務を定めています。フリーランスエージェント経由の契約でも、発注者であるエージェントや発注企業がこの義務を負います。契約条件が口頭のみの場合は、この義務が守られていない状態にあたります。
フリーランスエージェントと転職エージェント、どちらが向いているか
目的によって変わります。安定した収入、社会保険への加入、長期的なキャリア形成を重視する場合は、雇用契約を前提とする転職エージェントが向いています。単価の交渉余地、働き方の裁量、複数案件の並行を重視する場合は、業務委託を前提とするフリーランスエージェントが向いています。
両方を同時に検討する人もいます。正社員の内定を持ったまま、フリーランスエージェントで案件の単価や条件を比べてから働き方を決める進め方です。両者は別の契約・別の窓口のため、並行した情報収集を制限する規定はありません。
ITエンジニアは契約前に何を確認すればよいか
- 契約形態の明記: 雇用・請負・準委任のどれに当たるかを契約書で確認します
- SES常駐時の指揮命令の所在: 発注先から直接の指示を受ける働き方になっていないかを確認します
- マージン(仲介料)の開示状況: 非公開の場合は契約金額と受け取り額の差を自分で確認します
- 取引条件明示の書面: フリーランス新法第3条にもとづく明示があるかを確認します
転職エージェント選びの基準は「ITエンジニアの転職エージェント比較」、派遣との違いは「派遣と人材紹介の違い」にまとめています。
よくある質問
Q. フリーランスエージェントに登録するのに費用はかかりますか A. かかりません。収入をマージンとして契約金額から得る仕組みのため、登録者への直接請求はありません。受け取り額の計算方法は事業者ごとに異なるため、契約前に確認してください。
Q. SES(客先常駐)の準委任契約は労働者派遣と同じ扱いですか A. 名称としては別物ですが、指揮命令の実態次第で労働者派遣に当たると判断される場合があります。判断基準は昭和61年労働省告示第37号が定めています。
Q. 正社員の内定を持ちながらフリーランス案件を比較してもいいですか A. 問題ありません。両者は別の窓口のため、並行した情報収集を制限する規定はありません。契約開始日を調整する場合は、双方に事前に伝えておくと進めやすくなります。
Q. フリーランス新法は会社員から独立する人にも関係しますか A. 関係します。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は2024年11月1日に施行され、業務委託を受ける個人を対象にしています。フリーランスエージェント経由の契約でも、発注者には取引条件の明示義務が同法第3条で生じます。
Q. マージン率を公開していないフリーランスエージェントは避けた方がいいですか A. 一律には言えません。開示している事業者は多くなく、非公開でも契約自体は成立します。契約金額と受け取り額の差から実質の負担を自分で確認する方法もあります。
まとめ
- 転職エージェントは職業安定法にもとづく職業紹介、フリーランスエージェントは業務委託の仲介で、根拠となる法律が異なります
- お金の流れも、転職エージェントは採用企業からの成功報酬、フリーランスエージェントは契約金額から差し引くマージンという違いがあります
- SES常駐契約は指揮命令の実態次第で労働者派遣に当たる場合があり、フリーランス新法は業務委託契約の取引条件明示を義務づけています
次の一歩として、契約形態(雇用・請負・準委任)とマージンの開示状況を、登録前に候補の事業者へ直接確認してください。転職エージェントの選び方は「ITエンジニアの転職エージェント比較」、対応事業者の一覧は「情報処理・通信技術者を扱う転職エージェント一覧」で確認できます。